SEEHOOTPhotographer / Director
Yoichi Onoda

STRIDE

STRIDE 宮田裕美詠さん

カメラマンにとって、自分の写真の良さを理解し、引き出し、最大限生かしてくれるデザイナーと出会えることは、とても大切で幸運な事です。
料理における、野菜や肉などの素材がそうであるように、調理や味付け次第で素晴らしくも、もしくはそうでもないと感じてしまうものにもなってしまうからです。

僕にとって、自分の写真を100%生かしてくれると信頼しているデザイナーがSTRIDEの宮田裕美詠さんです。 宮田さんは富山を拠点に、企業の商品パッケージやロゴ、展覧会のポスターやブランドのカタログ等を手がけられていて、賞を受賞された、全国的に活躍されているグラフィックデザイナーです。
五郎丸屋の看板商品である薄氷の新ライン「T五」の商品パッケージや、日本が世界に誇る技術「木構造エンジニアリング」を駆使し、全国の建築を手がけられているSTROOGの企業本や製品カタログ、氷見に位置するワイナリー「SAYS FARM」のシンボルマークとパッケージ、金沢から産まれたデイリーブランドQui boonのブランディング等、手がけられた全てのデザインはシンプルで美しく、でもどこかでもどこか女性ならではの軽やかさや優しさ、優雅さを備えています。

初めてお仕事をご一緒させていただいたのは、2012年の冬。
ポートフォリオを見ていただいたその場で、お願いしたい仕事があるとおっしゃってくれた。
(そんな幸運なことは、もうないと思います。)
それが、五郎丸屋さんの新商品「T五」の撮影でした。
「T五」が作られる小矢部市の美しい風景を、詩とともにパッケージ内に同封し、商品ととも届けたい。
日本全国や海外の方に小矢部市の美しい風景を届けたい、それが「T五」の商品イメージなるとおっしゃっていました。
商品をただ撮影するだけでなく、商品の背景や世界観を考えた上で、風景写真をパッケージに使う。
それも、ついこの間会ったばかりの駆け出しのカメラマンにフィルムのみでお願いしてくれる、綿密かつ大胆なディレクションに僕は感動してしまったのを覚えています。
その後、「T五」は富山アートディレクターズクラブ賞2013グランプリを受賞し、ミナペルホネンの展示会等でも使っていただいたり、観光庁主催の究極のお土産9品にも選ばれるなど、大ヒット商品となっています。

「T五」の撮影の後、毎年、年に数回お仕事をご一緒させていただき、その度に東京で撮影したり、富山に行かせていただいたりしています。
宮田さんが今年作られた本、暮らすひとの撮影でspecialty coffeeの焙煎店 koffeを営む山中夫妻と出会えたこと、また東京から富山にお引っ越しをされ、富山で自分にしかできない事を頑張っている編集者の荒井江里さん、民芸を扱う林ショップの店主、林さん達と出会えた事は、僕のかけがえのない財産となっています。

東京にいると、みんなが同じ方向を向いてしまうというか、どうしても今流行っているデザインや写真にみんなが向かってしまっている気がします。
宮田さんは、富山に住み、富山の空気を吸っているからこそ、(富山らしいというのではない)宮田さんだけのデザインが産まれているではないかと思います。 東京にいなくてもどこでも素敵な仕事ができる時代なんだよと、教えていただいていると感じています。

今、僕は来年開催しようとしている写真展、出版しようとしている写真集の制作に取りかかっています。 自分にしか出せない、オリジナルの写真を確立したいと意気込んでおります。 デザインは、もちろん宮田さんです。